杉原です。
重複点テクニカルの実践者さんから「移動平均線の傾き」について質問を頂き、共通性の高い内容だったため、この記事を通じて共有したいと思います。
移動平均線の傾きについて
実際のところ、移動平均線をサポレジとしての反応に利用する際に、移動平均線の向きは特に重要視していません。
その辺りの原理を回答しながら解説させて頂きました。
まず、短期線であればレートの変化にMAは「敏感」なので、水平であっても即座に傾きがエントリー方向に向くことは少なくありません。
その上で、中長期線が水平の場合はレートの変化に対し、短期線ほど敏感に反応せず後々になって傾きが変わります。
それらを踏まえた上で、実際のところ移動平均線の傾きは気にしていません。
と言いますのも、移動平均線がサポレジとして機能する原理に傾きあまり関係ないからです。
サポートラインとして有効に機能する明確な理由があるので、ここで簡潔に解説させてください。(レジスタンスラインの場合は解説の逆で捉えてください)
まず移動平均線は、5分足30本の設定値であれば150分間(2時間半)という期間内に、実際に行われた売買における「平均価格の推移」の目安になります。
そのため、ローソク足が移動平均線よりも上にある相場では、
・買い注文を出したトレーダーは「含み益」で利益が出ている
・売り注文を出したトレーダーは「含み損」で損失が出ている
このような状況が考えられるわけです。(イメージは下図をご参照ください)
その後、価格が下がりローソク足がMAに近づくと、含み損が出ていた売り注文を出したトレーダーの中には、下図のように含み損が含み益(損失が利益)に変わるトレーダーがいます。
その際に「損失を避けたい心理」から、マイナスだった含み損が含み益に変わった段階で、利確の『買い注文』を出すトレーダーが少なくありません。(移動平均線の向き/傾きに関係なく)
また、買い注文を出したトレーダーの中には、含み益が含み損(利益が損失)に変わるトレーダーがいます。
そんなトレーダーたちも同じく「損失を避けたい心理」から、なかなか損切りの『売り注文』を出さずにいるトレーダーも増えるわけです。
それどころか、含み損を早くプラスに変えたいという心理から、ナンピンの『買い注文』を出すトレーダーも増え始めます。
「とにかく損失を避けて利益が欲しい」
「プラスになった今の内に、早く利益を確定しておこう」
このように「損失を避けて確実に貰える利益を望む」『プロスペクト理論』で定義されており、まさにトレードの世界でも、多くのトレーダーがこの理論に沿った心理で行動する=決済する傾向にあります。
プロスペクト理論の事例1
A:必ず10万円を貰える
B:50%で20万円を貰えるものの、50%の確率で貰える価格は0円になってしまう
貰える額が0円になってしまう「損」を回避し、確実に半分でも貰える『A』を多くの人が選択(プラ転で確実に利確の『買い注文』を出すパターン)
プロスペクト理論の事例2
A:借金20万が100%の確率で半分の10万になる
B:50%の確率で借金20万が0になるものの、50%の確率で借金の20万はそのまま変化なし
必ず借金が残るAの「損」を避け、50%なら可能性が高いと考えて全額返済が可能な『B』を多くの人が選択(含み損が出ていた買いポジションの損切りをしてマイナスを確定させたくない、結果、損切りの『売り注文』が減るパターン)
以上のように、移動平均線の上にあったローソク足が移動平均線に近づくと、売り注文よりも買い注文を出すトレーダーが多くなり「角度や向き(傾き)にあまり関係なく移動平均線がサポートラインとして機能しやすい」ということです。
(補足)中長期の移動平均線におけるトレンド
まず、すべての回避ルールをクリアした時点で、中長期のトレンドと逆のトレンドは確実に有り得ません。
その上で、サポレジの重複(反転指数が4点)あるため、仮に、その反転指数の中に中長期のMAなどがなく、一見、中長期のトレンドが持ち合いに感じても、
「中長期は押し目/戻りのタイミング待ち」
というケースが大半になっています。
そのため、中長期の視点で見た際に、中長期トレンドにおける初動に成り得るわけです。
ロングを例にすれば、
・中長期トレーダーからの売り注文が入ってこない
・中長期トレーダーからは買い注文のタイミング待ち
になり、短期~中期からはサポレジの重複も含めて、
・売り注文が減少
・買い注文が増加
となることで、買いの強さが増してきます。
よって、高い精度でロングが有効となってくるわけです。
以上、サポレジになる原理と併せて、特にMAの向きには強いこだわりを持っていませんでした。
参考にして頂ければ幸いです。
【関連記事】
>比較~FXのデイトレはローソク足の「途中/確定」どちらでエントリーすべきか~