杉原です。

この記事ではメルマガの読者さんからレビュー依頼があった、株式会社グローバルイノベーションが販売しているEA(自動売買ツール)のFX自動売買システム「KIRIN麒麟」を、ロジックを含めたレビューをしていきたいと思います。

FX自動売買システム「KIRIN麒麟」

このFX自動売買システム「KIRIN麒麟」は、株式会社グローバルイノベーションが公開しているバックテストにおいては、

100万の資金を使って約1年半でおよそ300万の利益

を出していて、月利では10%台が平均となっていました。

この月利10%台は裁量トレーダーとしては低く感じる成績ですが、トレーダー自身が一切の取引をする必要がないEA(自動売買ツール)としては、それなりの利益率かと思います。

ただ、それでもFX自動売買システム「KIRIN麒麟」は長く勝ち続けられないと考えられる3つの致命的な問題点があり、どうしても推奨できないEA(自動売買ツール)です。

そんな致命的な問題点を3つに分け、根拠とともに解説させて頂きたいと思います。

FX自動売買システム「KIRIN麒麟」の問題点1.バックテスト期間が短すぎるため、信頼性に欠ける

まず第一に挙げられる「KIRIN麒麟」の致命的な点は、あまりにもバックテストの期間が短すぎることです。

どのくらい短期間のテスト期間かというと、販売サイトに公開されている実績画像から抜粋した下図をご覧ください。

「KIRIN麒麟」のバックテスト期間が短すぎる

上図の赤枠で示したように『2020年1月6日~2021年6月30日』までの約1年半しか「KIRIN麒麟」はバックテストを行っていません。

裁量のトレード手法であれば、バックテストも手作業になるため膨大な時間がかかり、テスト期間を短くしてしまう気持ちは少し分かります。

ただ「KIRIN麒麟」のようなEA(自動売買ツール)であれば、バックテストは手作業ではなく自動でプログラム処理が可能です。

ですので、EAのバックテストに手間や労力は特に発生しません。

そんな手間/労力がないEAのバックテストであるのに、なぜ「KIRIN麒麟」は1年半しかバックテストを公開していないのか不思議に感じませんか?

EA(自動売買ツール)である「KIRIN麒麟」は、そもそもバックテストを自動化できるため、10年分でも15年分でもテスト結果を出せることは間違いありません。

それも、手間なくです。

その上、10年や15年分など、より長期間のバックテスト結果を公表すれば、その分だけ実績の信頼性は高まると思います。

「KIRIN麒麟」

少なくとも、1,2年のような短期間のテスト結果であれば、

「たまたま勝てていた時期のテスト結果だけ公開しているだけではないか?」

という印象を多くの方が持つと思いますし、逆に15年のような長期間のテスト結果であれば、そのような疑念を持たれる方は少なくなると感じるからです。

だからこそ、EA(自動売買ツール)を売り込む業者さんは、10年以上など長期間の実績を公開して信頼性を高め、売上を伸ばしている傾向にあります。

その上で「KIRIN麒麟」を販売している株式会社グローバルイノベーションは、このEAの売上を会社の収益にしていることは間違いないはずです。

ですので、売上を伸ばすためにも、バックテスト期間を最低でも10年以上に引き伸ばし、お客さんからの信頼性を高めないのは不思議でなりません。

バックテスト期間を長期にしてお客さんからの信頼を高めた方が、明らかに「KIRIN麒麟」の売上は大幅に上がると考えられるからです。

ですが、先ほども書いたように、この「KIRIN麒麟」の販売ページでは、わずか1年半のバックテストしか公開していません。

本来、販売の売上を伸ばすために、バックテスト期間をより長くすべきところを、あえて1年半という極めて短い期間のみにしているのは、

「その1年半ほどの短期間でしか、好成績を出せなかった」

という理由以外に考えられないと私は感じました。

要するに、この「KIRIN麒麟」は長く勝てる有効性を持つEA(自動売買ツール)ではないと率直に感じたわけです。

もちろん、これは私の考えでしかありません。

ただ、先ほども書いたようにバックテストをプログラムで自動化できる事実と、長期間のテスト結果を公表すれば売上が大きくなる可能性が高くなることを考えると、たった1年半しか実績を公開しない理由は『2020年1月6日~2021年6月30日』の期間でしか月利10%台の成績を出せなかったからと思えてしまうわけです。

そうでなければ、逆に「KIRIN麒麟」の売上本数を伸ばしたくなかったから意図的に信頼性を落とすような短期間の実績しか掲載しなかったのか、としか思えませんでした。(笑)

ただ、仮に、何か事情があって1年半分しか実績を公開していなくて、本当は長期間のバックテストを行っており、好成績を長期で維持できていたとしても、私はこの「KIRIN麒麟」を推奨しない理由として、2つ目の問題点として挙げる「ロジック」にあります。

FX自動売買システム「KIRIN麒麟」の問題点2.ロジックが不変性に欠けている

この「KIRIN麒麟」は、トレンド相場でもレンジ相場でも勝てるという抽象的な表現でしか、どのような手法かは明確に明かされておりません。

ただ、公開されているバックテスト結果を見ると、どのようなロジックで売買を行っているかを推測できます。

そこで「KIRIN麒麟」の販売ページに公開されていた実績の中から抜粋した、まずは下図をご覧頂けますでしょうか。

「KIRIN麒麟」の実績

上図の赤枠で示した箇所を見ると分かるように、同じタイミングで複数ポジションの決済が行われています。

つまり、含み損を抱えた際に、追加でポジションを持つナンピンを前提とした、複数ポジションで利益を取っていくロジックということです。

そんな複数ポジションのロジックは、無駄な損切りを抑えて、平均的に利益を高めていくける可能性があるので、これはメリットかもしれません。

ただ「KIRIN麒麟」の場合、先ほど挙げた図の同時決済時にも、実際には決済されていないポジションはいくつかあるうようで、大きく膨らんだ含み損を「そのまま」にしていることが考えられます。

そして、その膨らんだ含み損のポジションは、含み損が小さくなる、または別のポジションで取れる利益でカバーできるまで「耐える(放置する)」ようなロジックが推測できるわけです。

「KIRIN麒麟」のこのようなロジックは、上手く中長期のトレンドにも乗れば、含み損のポジションがプラテン(利確)できたり、ナンピンしたポジションの利幅が伸びたり、損失を抑えて利益を大きくすることも不可能ではありません。

ただ、長期間でバックテストをすると、中長期のトレンドに逆らう場面が必ずと言って良いほど増えてきます。

そんな中長期のトレンドに逆らったエントリーをすれば、含み損はどんどん大きく広がるだけではなく、ナンピンのポジション数も増えるわけです。

そして、中長期のトレンドに逆らっているポジションであれば、含み損を解消できるまで時間がかかりますし、いつまで時間が経過しても損失が広がり続けることも少なくありません。

何より、ナンピンしたポジションも含み損が広がり始める危険性が高まります。

最初に建てたポジション、ナンピンした複数のポジションにおける含み損が広がり続ければ、証拠金不足になり、本来はチャンスでエントリーすべき場面でエントリーできず利益を逃してしまうわけです。

また、それ以上に問題となるのが、含み損を抱えている全てのポジションを損切りせずに「耐え」続けていると、これ以上は含み損に耐えられない場合に全ポジションを解消する際に、大きな損失を受けることに他なりません。

上記のような、中長期の流れに逆らう相場に遭遇するほど、チャンスでエントリーできず、多大な損切り額の被害を受け、一気に資金を減らしかねないわけです。

そして、そんな中長期の流れに逆らう相場は、バックテスト期間を長くするほど遭遇率が高まります。

要するに、短い期間であれば、中長期の流れに逆らって大損を出す確率が下がるため、好成績を出しやすいわけです。

その上で、この「KIRIN麒麟」は公表されているバックテスト期間が異常に短いため、中長期のトレンドに逆らっている相場に遭遇しなかっただけかもしれません。

ここまで解説したように、複数ポジションを多く抱え含み損を耐えるようなロジックは、中長期の流れに逆らった際に、その損失を他のポジションでもカバーができずに、最終的に大きな損失を受けて、資金を溶かす危険性があります。

要するに、長期的に勝ち続けるようなロジックとは言いにくいということです。

そもそもEA(自動売買ツール)はテクニカル分析をベースにプログラムされており、そんなテクニカル分析は注文を出す人間心理を含めた「統計」になります。

その上で、信頼性の高い統計は、長期的に不変で有効性があるロジックに他なりません。

つまり、長期的に有効性がない=勝ち続けることができないロジックは、テクニカル分析の理にかなっていないロジックだと思います。

そして、この「KIRIN麒麟」が理にかなっていないロジックだということを裏付けていると感じるのが、通貨ペアの限定です。

FX自動売買システム「KIRIN麒麟」の問題点3.オージー/カナダドル(AUD/CAD)に限定されている

この「KIRIN麒麟」は、取引対象が「オージー/カナダドル(AUD/CAD)」のみに限定されています。

その理由として、販売元の株式会社グローバルイノベーションは「オージー/カナダドル(AUD/CAD)が高い成績だったから」と販売ページで語っていました。

本来、理にかなっている不変的なロジックであれば、どんな通貨ペアでも平均して近い成績を出せるはずです。

(もちろん、よほどマイナーで取引量が少ないことでテクニカルが効きにくい通貨ペアは除いた上での話になります。)

その上で、あえてオージー/カナダドル(AUD/CAD)に限定しているのは、ロジックそのものが不変性に欠けるもので、長期的に勝てない手法だからだと感じました。

だからこそ、この「KIRIN麒麟」は1年半という極めて短い期間のテスト結果でしか勝てていないのでは?と疑念を抱いてしまえるわけです。

何より、オージー/カナダドル(AUD/CAD)は、FX相場における主要通貨である、

米ドル
ユーロ
ポンド

が関わらない通貨ペアなので、取引量が極めて少ない部類に入ります。

つまり、取引しているトレーダー、デイトレーダー自体が非常に少ないわけです。

実際にトレードしているトレーダーが少ないということは、このオージー/カナダドル(AUD/CAD)は統計上の信頼性が低くなります。

そのため、オージー/カナダドル(AUD/CAD)はテクニカルがそもそも効きにくい通貨ペアと言っても過言ではありません。

要するにオージー/カナダドル(AUD/CAD)は、長期的に勝ち続ける上ではトレード対象として「向いていない」わけです。

その上で、この「KIRIN麒麟」が勝てていた『2020年1月6日~2021年6月30日』までの約1年半は、偶然にファンダメンタルズ要因で勝てていた可能性が考えられるかと思います。

と言いますのも、ここまで説明したように、

・複数ポジションの含み損を「耐える」ロジック
・取引しているトレーダーが極めて少ないオージー/カナダドル(AUD/CAD)に限定

という特徴が「KIRIN麒麟」にはあり、理にかなっていないロジックだと感じたからです。

もし、他の通貨ペアでも通用し、その中でもオージー/カナダドル(AUD/CAD)が一番に高い実績を出せていたのであれば、別の通貨ペアのバックテスト結果も掲載すれば良い話かと思います。

その上で「一番に成績が高いオージー/カナダドル(AUD/CAD)が最も利益を最大化できます」という形でアピールすれば、お客さんかの信頼性が高まり、「KIRIN麒麟」の売上が大きくなるはずだからです。

少なくとも、「KIRIN麒麟」のようなEA(自動売買ツール)はバックテストを自動化できるので手間や労力はかかりません。

それなのに、他の通貨ペアの実績を出さないということは・・・実際のところ「KIRIN麒麟」はオージー/カナダドル(AUD/CAD)でしか上手く勝てていなかったのかな、と感じてしまったんです。

ですので以上から、この「KIRIN麒麟」はオージー/カナダドル(AUD/CAD)の「癖」や、そのバックテスト期間内に生じていた「ファンダメンタルズ要因」から、短期間のみ勝てていたEA(自動売買ツール)なのかと率直に思いました。

要するに、理にかなっていない長期的に有効性がある手法とは言えず、勝ち続けるロジックにはなっていないと感じたわけです。

まとめ:FX自動売買システム「KIRIN麒麟」のロジック

以上、この記事ではFX自動売買システム「KIRIN麒麟」のロジックを掘り下げた上で、

1.バックテスト期間が短すぎるため、信頼性に欠ける
2.ロジックが不変性に欠けている
3.オージー/カナダドル(AUD/CAD)に限定されている

という、勝ち続ける上では致命的と言える3つの問題点があるので、推奨はできないという解説をさせて頂きました。

この「KIRIN麒麟」のようなEA(自動売買ツール)は、多くの場合が何らかの問題を抱えており、長期的に勝ち続けられない傾向があります。

その具体的な理由は、下記の記事でAI(人工知能)関連も含めて解説していますので、興味がありましたらご覧になってみてください。

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